踏み台環境でテレポートする
FOLIOのアドベントカレンダー1日目です。
ブラウザから使える踏み台(Bastion)であるGravitational社のTeleportについて書きます。SSH秘密鍵を始めとしたクレデンシャル情報をローカルからなくす(もしくはクレデンシャルのアクセス権限を永続化させない)というのは、おそらくセキュリティに携わる人の課題の一つだと思います。 踏み台の文脈におけるその課題は、AWSではSession Manager、GCPではCloud Shellなどで実現しつつあります。Teleportもそのようなソリューションの1つと捉えることができるでしょう*1。
おそらく日本語の公開事例としては初でやったぜこれでホットエントリで間違いなし承認欲求万歳、とウキウキしながらアドベントカレンダーの準備をしてたら、クラウドネイティブのすだちくんに先を越されて泣いています。あー悔しい。
というわけで、全体的なTeleportの紹介はそちらに譲り、本エントリでは当社ユニークな構成についてお話させていただきます。
- 当社の構成
- 改善ポイント
- 当社の貢献
当社の構成
構成そのものはスタンダードです。TeleportプロキシはCLIとブラウザで受けるために、それぞれNLBとALBを用意しています。 エンタープライズライセンスは共通するS3バケットにいれています。
通常利用時も特殊なことはしておりません。例外なくユーザーはIdPでのSAML認証とそのアトリビューションにより、Nodeへのログインに必要なフェデレーションおよび権限が割り振られています。ログイン後の作業ログはS3に保存され、ログインなどのイベントやセッション情報はDynamoに保存されています。
基本、AuthサーバーやProxyサーバーにログインできないようにしていますが、緊急時は停止させている緊急用踏み台を起動&SSH Proxyでのログインを実現しています。その場合、緊急ログイン用の秘密鍵が作業端末上にあると元の木阿弥ですので、当社ではKryptonと呼ばれるスマホ上のセキュアストレージに秘密鍵を入れるソリューションを使っています。これを使うと、ログイン時にスマホに利用可否通知がきて、そこでアクションをとることで初めてSSH鍵認証が完了します。原理上、秘密鍵はそこから取り出せないので、スマホを盗難されない限り安全です。
Krypton | Let's make two-factor easy & secure
プロビジョニングはConsul, Ansible, Teleportの組み合わせでしています。Nodeの方は既存の枠組に乗りAnsibleとConsulを使っています。ProxyおよびAuthサーバーはTerraformでAWSのリソースもTeleportの設定ファイルもプロビジョニングしています。
改善ポイント
デバッグ・デプロイの効率化
ログインイベントのデバッグをする場合、イベントログのはいってるDynamoを見るわけですが中々追いづらいです。また、構成管理権限を基本もっているので、デバッグのためにDynamoに入りたくないということもあります。当社の場合、Datadogを使ってメトリクスやログを収集しているので、今後はDatadogに寄せる予定です。
また、業務分掌(Segregation of Duties, SOD)を真面目にやろうとすると、Terraformでプロビジョニングしている設定ファイルとシェルスクリプトがuserdataのサイズ上限に引っかかってきます。また、デプロイ作業そのものもマニュアルな部分が多いです。よってそこは、同僚であるSREの @sion_cojp *2 の仕事を参照して、Fargate/Docker/SlackBot/Makeをもりもり使うイカしたものを作って行こうと思います。
業務分掌が辛いんじゃぁ〜
Teleport EntepriseはRBAC(Role Based Access Control)が可能です。しかしながら、あくまでもクラスターごとの設定であり、集中的な権限管理ができません*3。
真面目にSODをやろうとすると戦術の通り設定ファイルが大きくなります。各AWSアカウントごとの設定、更に言うとその中でもマイクロサービスごとに、もっというとチーム内の役割ごとに権限が異なるためです。残念ながらTeleportの設定はあくまでもYaml記述ですので、if stg && account {
if manager { allow root login} else { allow normal login } }
のような制御ができません。これに対するしくみは現状ありませんが、k8sのClusterRoleBinding
を真似して、コントロールプレーンのプラグイン作成のようなチャレンジをしてみたいと思っています。
当社のTeleportに対する貢献
当社はただTeleportを使うだけではありません。積極的に欲しい機能やバグ修正をPRするなど、コミュニティへの貢献もしております。
残念ながらまだコントリビューターにはなれていませんが(cherry-pickされてる)、OSSであるからには開発者と利用者が協力して継続的なサービス改善に挑んで行きたいと思います。
FOLIOでは仲間を募集しています
ビジネスとそれを取り巻く環境(含むセキュリティ)は日進月歩です。ビジネスサイドや開発者が圧倒的な進化を遂げて新しいサービスと価値を世に広めようとするなら、情シスやセキュリティもそれに適応していくことが求められます*4。
そのためには、最新の技術動向やOSSを含む製品選定が求められていくことになりますが、時には文字通りコミットすることで技術やOSSそのものをドライブすることも今後の情シス・セキュリティチームに必要になってくると思います。 そういったアクティブな情シス・セキュリティ活動を当社でやってみたいかたは Twitterの @ken5scal に気軽にDMください :)
2日目は @mura-mi さんです。